映画『屍人荘の殺人』 感想
実写『屍人荘の殺人』、原作の肝である「その状況だからこその殺害方法」「なぜその方法を選んだか」のミステリーとしてのベースはちゃんと押さえてあったし、そこに辿り着くヒントもちゃんと提示されてたしそこは満足
— 920/呪🎉廻アニメ化 (@m_t_z_w_1994) 2019年12月14日
ネタバレ無し感想から。
映画の公式情報が出てから正直不安しかなかった実写版『屍人荘の殺人』。情報が出そろってきてどの程度の改変なのかをちょろっと覗いてみたら女性キャラは小バカにしたようなフレーズがつけられてるし個人的に一番ビジュアライズを楽しみにしてた原作ではボーイッシュイケメン女子の高木凛が映画ではうざそうなオバサンに改変されたことを知って怒り心頭。
じゃあなんでジョーカーもゾンビランドもITもドクター・スリープも観てないのにこっち観に来たかってそりゃまあ原作が大好きだからなんですよね。
今までも東京喰種、亜人、テラフォーマーズ、進撃の巨人、GANTZ(前編のみ)等々原作読んでるやつは割と実写化作品は観に行ってるので今回もちゃんと観たかった。
…で、鑑賞後1発目がこちら
映画『屍人荘の殺人』
— 920/呪🎉廻アニメ化 (@m_t_z_w_1994) 2019年12月14日
ナシナシよりのアリ!!!!!
んで冒頭にも置いたこれ
実写『屍人荘の殺人』、原作の肝である「その状況だからこその殺害方法」「なぜその方法を選んだか」のミステリーとしてのベースはちゃんと押さえてあったし、そこに辿り着くヒントもちゃんと提示されてたしそこは満足
— 920/呪🎉廻アニメ化 (@m_t_z_w_1994) 2019年12月14日
正直、文句や不満点はやまほどある。いいとこ言うより悪いとこ言う方が簡単だってことを差し引いても多分ダメだと思うとこの方が多い。
寒すぎるギャグ、R指定回避のための演出なのはわかるが何度もそれやられてもくどいしもっと音でうまくやれなかったのとかよくわからない改変をした結果ただうるさいだけのウザキャラとか・・・
が、個人的にはツイートの通り本格ミステリとしてのロジックや推理展開の構成はうまかったし多分原作未読の人が観ても割とわかりやすかったと思う。ペンションの見取り図がわかりやすく出てこないから位置関係がわかりにくいことは難点だが事件解決に必要な手がかりはきちんと提示されるしそれを想起させるようなヒントも映像だからこその演出でそれとなく描かれてたりしてたし、一番ちゃんとしてほしかったところがちゃんとしてたので個人的な総評としてはアリ。
正直原作好きの人に勧めるかというと微妙なとこ(単にビジュアライズが見たいならコミカライズを読んだ方がいい)だけど、少なくとも実写化アレルギーの人が予告から想像するよりは酷くないとは思うんだ。
アリだと言ってる割には微妙な書き方になったけどとりあえず以下ネタバレで
もちろん原作のネタバレも含みます。
先に不満点バーっといこうか
何よりも一番クソなのは高木凛の改変。正直何を考えてあの改変をしたのが何一つ理解できない。キャラ変するなら名前から変えろといつも実写化作品に対しては思うんだけど、今回は名前変わっててもマジでいらないキャラだった。
原作では内気な静原をOBから守るイケメン女子だった高木だったけど、今作では静原がサークル外から参加するように改変されたから高木のポジションは不要となるわけだから、そもそも登場させる必要はない。じゃあなんでわざわざ外野のオバサンと改変してまで高木凛を登場させたか。
本当にわからない。
なんせこのオバサン、とにかくメインの殺人事件に一切かかわらないし推理に必要な要素を提示する役割すら担ってない。同じく外野組に変更された出目はまだ進藤殺害を発見するきっかけの騒動を起こしただけ一応仕事はしてるが高木はほんとに何もしてない。ただただうるさいだけで存在そのものが不快でしかない。唯一仕事したのは原作通り進藤の頭を刺したくらいだけどあれも正直高木があのキャラ変されてるんじゃ他の人間がやったところでたいして変わらないしね。
円盤出すときは編集でこの人無かったことにしよう。それだけでだいぶ良くなると思うよ。
次の不満点はグロ描写に関して。正直R指定じゃない時点でそこには特に期待してなかったし肝心のゾンビに関してもまあいつものジャパニーズクオリティだなって感じで可もなく不可もなく。どうせならアイアムアヒーローみたいに気合入れて欲しかったけど。
何がダメかって頭をつぶすときのあのレントゲン。R指定回避のためなのはわかる。だけど何度も出てくるシチュエーションを毎回あのスローレントゲンで見せられるのは正直くどい。1回目を印象付けるために使うだけならまだしも他全部それ使うのは無い。まじで無い。普通に当たる瞬間に切り替えて音と倒れる死体を映す、とかだけでよかったでしょ。スロー演出自体は別にいいんですが雑に多用するとただただテンポが悪くなるだけなのでノーサンキュー
あとの不満点はキャラの行動の動機付けが弱いところ。
まず進藤。原作での進藤は戻ってきたところでゾンビ化した下松が殺されるところを目撃したことによって噛まれた星川をかくまうことを決意するわけだけど映画では星川をかくまうことにする動機が分かりずらい。映画では最初にパニックが起こった段階では星川を最初から隠す必要が無いんだよね。最初にゾンビになった下松が殺されるとこ、進藤は見てないわけだし。
次に静原。殺害動機については原作通りだけどそこを一押しするきっかけが映画だと弱くなっちゃってる。原作では明智に救われたことで殺人に迷いが生まれた静原を葉村の慰めの言葉が結果として「殺人の許可」となってしまったわけだけど映画だとそう解釈できる言葉を葉村は言ってなんだよね。なんせその時点で映画葉村は明智生存を信じてるわけだから。ストーリーの核心に関わるとこだからその辺はもっときちんと描写して欲しかったな。
他にもラストなんで明智さんだけそんなとこおるんやとかそこでエンドロール入るならエンドロール後に新生ミス研誕生シーンいれろやとか色々文句出せばきりがないんだけどまあこの辺で。
良かったのはやはり事件解決への道筋が丁寧なところ。なぜか布団の中にも付いている血、エレベーター内で殺されたはずなのにドア内側には血が飛び散ってない、まあそれが無きゃ観客が後出し情報で混乱するとはいえちゃんと必要な要素をきれいに配置してくれたのはとても良かった。
個人的に気に入ってるのは序盤で進藤星川がエレベーターに乗ろうとしたら重量オーバーのブザーが鳴るシーン。この時点で立浪殺害のトリックのヒントがさりげなく出されてたのはナルホドとなったよね。映像だからさらっと入れられるシーン。なんのことは無いシーンだけどここだけで映像化した意味はあったなと思ってしまった。
睡眠薬とか目薬の話、音楽がいったん止まってすぐかかる、映像で丁寧にやろうとするとテンポが悪くなりそうな部分も展開の改変をしたことでスムーズに情報が入ってきたし、謎解き周りはほんとにしっかりしてたのでそこをちゃんとやってくれたので大満足。
中村倫也演じる明智さんがバッチシハマってたのもグッド。若干オーバー気味ではあるが、大体空回りだがここぞというときはキメる明智さんをちゃんと演じてたよ。
だからこそラストのゾンビ化明智との邂逅はあんな雑にしてほしくはなかったけどね。
ということで、ナシ要素盛沢山とはいえ、個人的には結構よかったですよ実写『屍人荘の殺人』